「レモン哀歌」

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私の大好きな
高村光太郎の詩集 『智恵子抄』に収められている
「レモン哀歌」

初めて出会ったのは小学4年の教科書でした。
なんて哀しくも美しい詩・言葉なんだろうと
子供ながら心に深く焼きついたのを覚えています。

鮮やかに
薫りほとばしる
哀しく
優しいうた

「レモン哀歌」
        高村光太郎

そんなにもあなたは待っていた
かなしくも白くあかるい死の床で
わたしの手からとった一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱつとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑う
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
わたしの咽喉に嵐はあるが
かういふ命の瀬戸ぎはに
智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にたむけた
それからひと時
昔山巓でしたやうな深呼吸を一つして
あなたの機関はそれなりに止まった
写真の前に挿した桜の花かげに
すずしく光るレモンを今日も置かう

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